<World>







Caution;クラトスルートで、ゼロスの死後を想定しています。苦手な方はご注意ください。

















『お前、まっすぐすぎるのな』



ゼロスは苦笑した。

『俺さま、心配〜』

『何が!?どーしてあんたに心配されないといけないのさ!』

『ちぇー。可愛くねーのー!……だってさ、俺さまみたく察しのいい男は稀だぜぇ?俺さまは頭がいーからしいな
のこと理解できっけどさぁ…………俺さまがいないと、お前ダメなんじゃねーかと思って』

あの時の口調とは裏腹な寂しげな瞳――――どうしてかな……?

よく、覚えてる。

『んなっ……!んなわけないだろ!?』



あるわけないと思ってたんだ。


―――あんたは勘違いしたかもしれないけど。

あんたがあたしの前から姿を消すなんて。

有り得ない―――そう信じてた。

嫌な予感は常にしていた筈―――それなのに。

あたしは信じてた。

あたしがいて、あんたがいて。それは恋とかそんなんじゃなくてあまりに当たり前だと思ってた……。



『……もっと要領よく生きろや』



俺さまがいなくなったら―――だけど。そう言ってゼロスは笑った。

『……まぁ、俺さまは―――……………










「……………」

沈黙が、痛かった。

「……あの……」

ごめんね――――そう言おうとしたあたし。

おろちは首を振ってそれを制した。

「……理由を訊いてもいいか?」

「………」

―――理由なんて……。

おろちが嫌いなわけじゃない。嫌いなわけない。寧ろ好きな位――――でも。

その‘好き’はきっとあんたの望む形をしていない。あたしはそれを知ってしまった。



「……神子殿か?」

「………」

違うよ……そう言おうとして、あたしは止まった。

本当に違うの……?



ずっと、ずっと……あたしはあたしであることが許せなかった。こんな罪深いあたしが、存在することが許せな
かった。

………でも……あいつは………。

きっと同じ筈なのに………。

あたしがあたしでいいって、言ってくれた。






『……まぁ、俺さまはそんなバカ正直で、要領が悪いしいなのこと嫌いじゃないぜ?』






………本当に優しい目をしてたよね?

どうしてなのか解らないけど、涙が出た。

嘘でも、あたしは嬉しかった。

その言葉の温かさに―――――。

泣くあたしを抱きしめたあんたの温かさにまた、涙が出た……。




「……しいな。分かったから、もう泣くな」



「………え……」

気付かない内に流れていたあたしの涙を指先で拭いながら、おろちは寂しげに笑った。

「……お前は相変わらず嘘が下手だな」

「………」

「……お前といい、くちなわといい……神子殿といい、俺の周りは不器用な奴らばかりだ」

「………」

―――あんただって、そうじゃないか。おろち……。

「……俺もそうだ……って思っただろ?」

「…!」

言い当てられて、二人で笑った。

「………ねぇ。おろち」

「……」

「……寂しいね」

真っすぐに想うのは、あまりにも―――。

「……そうだな」

変わることなんて出来ないのを知っているけど。

気付くのはいつも遅くて、でも気付いた時には、その魔法に捕われている。

逃れることなんて出来ない――――逃れることを望みもしない。


不器用で歪なこの世界で。

あたしは今でもあんたを探している―――。






end

2007.6.12up