<私じゃだめだった>


恋したくなるお題
様より。
片恋のお題(1〜20)、2.

FF7 Tifa→Cloud







「私じゃ、駄目だった」

声に出すと、寒々とした響きで、それは私の鼓膜を刺激する。

だから、貴方は行ってしまった。きっと、私の手の届かないところに。



大好きだったの。

本当に、私はあなたが大好きだった。

だから、本当は心が痛かったけれど、祝福したい――――そう思っていた。
大好きなあなたと、初恋の貴方。

でもあなたたちが幸せになるなら、いいや。そう、思っていたのに。

―――あなたは、いなくなってしまった。

私の思いも、彼の想いも置き去りで。

「…………」

捻った蛇口からはさらさらと静かな音を立てて、水が流れ出る。
もしも、マリンがそれをしたなら、「無駄使いはダメよ」と、咎めるに違いないのに。
私はただ、それを見ていた。

あなたを失った、私と彼は、とてもとても不安定で、立つことさえ出来ない有様だった。だから、倒れないようにと、互いを求めあった。

―――代わりで、いい。

そう思った。代わりになれるのなら、良かった。
でも………。

貴方は、言った。泣きたくなる位に優しい笑顔で。

『ティファは、ティファだろう……?』

そう。エアリスには、なれない。

花を育てても。
彼女の好きな紅茶を淹れても。
似合わないひらひらの服を着たって。

――――私は何処まで行っても、私から逃げることなんて、出来ない。

苦しんでいる貴方を救うことも出来ない。

何も出来ない。何一つ、出来ない。

「……………」

貴方のいない店。

あなたのいない世界。

そこで、私は独り来ない終焉を待っているのかも知れなかった。




end




2008.8.4.up


img 廃絶空虚