<嘘が上手くなるたびに>
恋したくなるお題 様より。
片恋のお題(1〜20)、6.
FF10 Tidus→Yuna
嘘が上手い、なんて自覚は全くない。
むしろ、下手な方だと思う。
ユウナほどじゃないと思うけど。
ユウナは沈む夕日に、真剣に何かを祈っていた。その姿は、近寄りがたい位綺麗で、オレは、それをずっと見ていた。
最後かもしれない。
最近、やたら最後、って言葉を意識するようになったんだ。
今まではこんなこと、考えたこともなかった。
前を見て、歩いているような、到底届かない親父の背中を追って走っているような気がしていたけど。
今、オレが見ているのは、前でも親父の背中でもない。
すぐそこにある――――‘最後’
それは、手に入れることが叶うのか、分からない。
けれど、オレはそれを手に入れたいと思うんだ。
‘最後’にしよう。
親父をその苦しみから解き放ってやる。
人々をこの苦しみから解き放ってやりたい。
なにより――――ユウナを守りたい。
オレなんかが、何かを守れるのか、今でもよく分からないけど………ユウナにはいつでも笑っていて欲しいんだ。
―――本当はその隣にずっといたいんだけど………。
それは出来ないこと、知っている。シンがいなくなることと、オレがいなくなることは同じこと―――知ってしまったから、もう戻れない。
ユウナには言えない。知ってしまった時からオレには誰にも言えない秘密が出来た。
この秘密は誰にも言えない。
最後の戦いに挑むまでは。
―――ユウナ、泣くかな………?
泣かせたくない。
でも、泣いて欲しい。
自分の中の矛盾した感情が理解できない。
本当はオレは、凄く弱い人間だから、怖くてしょうがないんだ。
「キミ?」
「………………」
夕日を背にしたユウナの表情が見えなくて途方に暮れた。
「………泣きそう……?」
「……気のせいだよ」
オレは笑顔を作って、ユウナに手を伸ばした。
「行こう。ユウナ。皆、待ってる」
ユウナの隣を歩けるのは、あとどれくらいだろう?
来年、ユウナの隣にいるのは、誰なんだろう………?
ひりひりとやけつく感情を、目を閉じて封じ込める。
笑って見せると、ユウナは少しだけ、何かを言いたそうな顔をしたが、やがて、笑った。
end
2008.8.4.up
img 空と海の鐘様
|
|