<例え1%でも>


恋したくなるお題
様より。
片恋のお題(1〜20)、20.

TOS Zelos→Shihna









トリエットでも評判の占い師。

アホらしい。占いなんてどーせテキトーに言っときゃなんか当たるっつーの。

まー占い師が褐色で紫の髪の美人で更に露出度の高いおねーさんがいたりしたらまた話も違うけど!
(←ゼロスさま。ゲームが違います)

とか思いつつ、俺はそのあやしい門を開いた。

暑いし、やる事なかったからだけど。

占い師は―――女だった。が、ベールをすっぽり被ってて露出度はかなり低い。

「……つまんねー……」

「占いを?」

俺の呟きがきこえたか聞こえないかは知らないが、彼女は俺に声をかけてきた。

「……ん〜。まぁテキトーにぃ〜??」

女は微かに笑うと、水晶に手を翳した。

「……お名前は?」

一瞬迷ったが、ここはシルヴァラントだ。名乗ることに問題はないだろう。

「……ゼロス。ゼロス・ワイルダー」

「…………」

水晶はきらきら光るだけ。この中に何かが見えるとは到底思えない、と言うか胡散臭い。

俺はこきこき首を傾げた。

「………強い運命の力を感じます。………貴方は、じき大きな判断を迫られるでしょう」

それは、もう、間違いなく。
占うまでもない。
俺は冷ややかに笑いながら問う。

「……どちらを選べば?」

「…………どちらも大きな選択です。しかし、貴方はどちらにしても、ご自分で選ばれましょう。必
ず直前に貴方が決められる出来事があります」

「……無難な答え〜。俺さま、期待外れ〜!!」

俺の不満に占い師は全く動じた様子なく、笑った―――婉然と。

目の部分しか見えてねーが、それは色っぽく。

「………あとは恋愛運、とか?」

「……………」

占い師はふ、と笑った。

「………報われぬ恋をしておいでですね?」

「…………」

「貴方の想い人は違う方を見ていらっしゃる」

「………」

「そして、あまりに違う環境で育ち生きて来た方」

「………知ってんの…?」

あまりに思い当たるから、逆に俺は疑念を持った。ゆるりと占い師は首を横に降る。

「……いいえ。でも」

占い師は正面から俺を見据えはっきりと言った。

「叶わぬ恋です」

「ぐっはぁ………はっきりゆーねぇ〜」

更に占い師は容赦ない追い打ちをかけてきた。

「二人の世界は違い過ぎます。結ばれたとしてもほんの一瞬のこと。互いに互いを傷付け、互いを憎み合うようにな
りましょう」

「………これって慰めてくれる、とかのオプションないの〜?」

結構―――オチる。たかが占い―――されど占い。

そんなにはまってるつもりもなかったのに。

これできゃあきゃあ騒ぐ女の子の気持ちが少しだけ分かった。

「………」

ふぅ……と俺はもう一度占い師を見た。料金にチップを加えた料金を水晶の乗ったテーブルに置きな
がら。

「参考までに、こうすればうまくいく、とかねーの?」

ゆるゆると占い師は首を振る。

「……じゃあ、うまく行く可能性はどれ位?」

「………」

占い師は質問に少し逡巡した様子を見せ、答えた。

「1%」

「……そっ。ありがと〜」



「1%……かぁ……」

不必要な位の日差しが疎ましい。

なんだよ?
凹むっつーことは結構惚れてたってことだ。

「………」

「あ。いたいた!アホゼロスー!!」

「…………」

「返事しろっ!!アホっ!!」

「アホってゆーな!アホしいな!!」

「アホをアホって言って何が悪いのさ!アホ!!」

「……んでしいなは俺さまにアホ!って言いに来たわけぇ〜??」

「違うよっ!!ご飯」

「………俺さま外でテキトーに食う……」

「あのね、ご飯食べながら次行く街を相談するの!!ナンパしてる場合じゃないんだよ!!」

「ナンパなんてしてねーよ!!ちょっと凹んでるだけ……」

「どーしたのさ?」

「俺さまの望みは1%しか叶う可能性ないんだってさ〜」

俺が占い師の小屋を見ながら言うと、しいなは目を丸くした。

「へぇ〜!!あんた占い信じるんだ!!1番信じないタイプだと思った!!」

「ば……!信じてねーよ!!」

「でも凹んでるんじゃないか!!」

「……………」

「1%、あるんだろ?」

「……1%しか、だけどね」

「………ゼロじゃない」

「……限りなくゼロに近い」

「アホ!!ゼロはいくらやってもゼロだけど、1%は1000回やったら1回。1000人いたら1人は出来るん
だよ?」

「…………」

俺は思わずしいなの手を握った。



「な……なんだよ?」

「しいな!お前本当ーにアホだな!」

ばきっ!!

「言いたいことはそれだけかっ!!!」

「いってぇ〜!!だって〜!!しいな、1%は1/100だぜ〜?100回やったら1回だし100人いたら1人!
!」

「あれ?そーだっけ??一割一分一厘で言ってくれないと分からない……」

「渋い!!しぶすぎるぜ!!」

「ってかそれならかなり確率高いじゃないか」

「……まぁ……0.1%よりは……」

「諦めたら、もうゼロだよ」

「………確かにな……」

「ゼロより遥かに高いだろ?」

「……だよ、な……」

「だよ」

「よし!俺さまは頑張ることに決めた!!諦めねーぞ!!」

「そうそう!……って、ところであんたの願いって、何??」

「決まってんだろ〜? 世の中の女の子をゼロス様ハーレムに……」

がんっ!!

「いってぇ〜……」

「んな願いは100%叶わないよ!!!」

ってか、こんなんじゃ、本当ーに叶いそーにねーけど……。

俺は怒り狂うしいなの後ろ姿を見ながら、呟いた。

「……1%……ねぇ」

たったの。

たかが。

それでも――――。

ゼロじゃねぇ。 お前がそう言ったんだから。

「……あきらめねーぞー……」





end

2008.8.4up






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