<スキをみせたら奪うから>


恋したくなるお題
様より。
片恋のお題(1〜20)、14.

FF5 Krile→Butz








「お前なんか知るかっ!!」

「おー!上等だっ!!!」

険悪な雰囲気で二人は怒鳴りあって。ファリスは凄く大きな歩幅で宿屋に歩き出して、バッツは不機嫌な顔でそこに立ち尽くす。

「「…………」」

旅の間の日常茶飯事。

私とレナはひっそりと溜息をついて、分かれた。

レナはファリスの方に私はバッツの方に。



********



「……………」

バッツは苛々してる。いつもは温厚な分怒ると結構、怖い。って言ってもマジ切れしたのは後にも先にも一回だけだと思うけど。

「バッツー」

「…………」

とたとた歩いて、バッツの近くに立つ。

「………怒ってる?」

バッツの顔はすぐに優しい笑顔を作って私を見た。

「……怒ってないよ。クルルには」


「ファリスには、怒ってる?」

「…………」

その名前に、バッツは苦い顔をした。

「なんで喧嘩したの?」

「…………ファリスが……」

「ファリスが?」

「言うだけで頭くるからやめた!!」

そう言ってバッツはごろん、と草原に横になった。私はバッツに倣って草原に座った。

風はないけど、やっぱり草原は気持ちが良い。でもバッツはやっぱり機嫌が悪くて。

「……」

レナとファリスはいつも一緒が多いから、私はバッツといる機会がとても多い。

だから、私の方がバッツのこと、たくさん知ってる。

初恋の女の子の名前とか。ボコとの出会いとか。

でも………。


「………」

「……………あー……」

「ん?」

「……カッコ悪いよな。俺」

「…うーん………うん」

カッコ悪いけど、バッツが好きだよ?

言える筈もない言葉。

「……ったくクルルははっきり言うよなー……」

「そう?」

「………ファリスを、さ」

「うん」

「庇ったんだ。……そしたらめちゃめちゃ怒って」

「………」

「『俺庇う暇あるならクルルとレナ庇え』って」

「………」

「お前だって女に変わりねーじゃんって言ったらめちゃめちゃキレてさ……」

ファリスはいつもバッツと対等でいたいと思っているから、その言葉は逆鱗に触れたのだろう。

「私だったら嬉しいけどな」

「……え…」

恋がしたいって、ずっとずっと思ってた。

でもそんなのは物語の中だけの話で、いつか誰かが連れて来た人と結婚するんだって思ってた。

別にそれはそれでいいか、って思ってた筈なのに。

今はそんなのイヤ。


―――あなたなんかに出会わなければ良かった。


「……私だったら凄く嬉しい」

「………」

バッツは困ったような顔をして、私の頭をくしゃくしゃと掻き回す。

「ありがとう」

「……」

「クルルはいい男、捕まえろよー?」

「………」

私はバッツのマントにぎゅっと捕まった。

「………私……」


あなたがファリスを好きだなんてこと、いやになる位知ってる。
30分もすれば、二人は何もなかったように軽口を叩いて、じゃれあうことも、私は知ってる。

スキなんて、全然ない。

だから……。



私じゃ、ダメ?



その台詞を言わせることなく、バッツはマントごと私の肩を抱いた。

視界が滲んでよく、見えない。




end


2008.8.4.up




img Smile Time