<それでも好き>
恋したくなるお題 様より。
片恋のお題(1〜20)、3.
FF7 Aerith→Cloud
「……クラウド……大丈夫…?」
「……………」
ティファは大きな眼に涙をいっぱいためて、クラウドを見ていた。
クラウドやバレットと同じように前線で戦っているティファ。そんなティファを庇いクラウドは深手を負った。
怪我をしているクラウドの頭を膝に載せて、とうとう、ぽつり……とティファの瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
目を閉じていたクラウドの瞼に。
「………」
クラウドは、目を開けて、手を伸ばす―――ティファの瞳へと。
「……ティファ……」
「………クラ……」
「……大丈夫だよ?……ティファ……泣かないで……」
ティファはクラウドの手を握り、泣き出した――――その涙は止まりそうにない。
「…………」
私は辺りを見回した。
つい先程まで隣にいたエアリスがいない――……―。
「……エアリス」
エアリスは近くの泉に足をひたしていた。
「………エアリス」
「……ヴィンセント…」
「何をしている?個人行動は危険だ」
「………」
エアリスは声もなく軽く笑った。
「……心配、してくれたの?」
「…………どうした?」
「……いやに、なっちゃった」
ぱしゃ。
エアリスは水を蹴る―――きらきらと飛沫が日光を受けて輝く。
「……嫌に?」
「………好き」
輝く水面を見つめたまま、エアリスは呟くように言った。
「………」
静かだ。
水のさらさらと流れる音だけが静かに響いている。
「……どきって、しなかった??」
エアリスは悪戯っぽい笑顔を浮かべ私を振り返った。
「………」
「つっまんないな〜」
何も気の利いたことも言えず、無表情の私は彼女の機嫌を損ねてしまったようだ。
「……クラウドの話か」
「………好きになる予定なんて、全然なかったのに」
「………」
「好き、になっちゃった」
躊躇なく、はっきり言葉にするのがこの娘らしい――。
その真っ直ぐさは眩しく、羨ましくもあった。
「………隙間なんて、全然ないのに」
「……………」
クラウドはティファに好意を持っている―――ティファも。
二人とも言葉には出来ないが、それは明白で自覚がないのは本人たち位かもしれない。
―――ティファは好意だけでなく、何らかの疑念や恐怖をもクラウドに持っているようだが……。
「…………」
「……全部」
「……?」
「全部、あいつのせいよ」
「………あいつ…?」
「好きな人、いたの。クラウドと同じソルジャーで、少し、クラウドに似てる」」
「…………」
「あいつが、わたしに勝手でいなくなったから――――あいつを探してるわたしがいる」
「………」
「だから、好きになっちゃった」
「……………」
「好きに……なっちゃった」
「……」
「クラウドがティファを好きだなんてこと、クラウドより知ってるのに」
「………」
「……それでも、好き」
「………」
彼女にしては低い声のその科白はまるで、自身に言い聞かせるかのようで――――それでいて、何故か
自分自身を思い出す。
愛されなくとも、構わないと思った。彼女が幸せなら、構わないと思った。
独りよがりに等しい、愚かな感情。それは――………
「……そう言った感情は、コントロール出来るものではない。報われなくとも、救われなくとも」
エアリスは目を丸くして、私を見た。
「……………どうした」
「あ〜…。びっくりしたぁ〜。聞いてないって思った」
「…………」
「……」
エアリスはふわり、と笑った。似ても似つかないのに、その儚げな笑顔がルクレツィアの笑顔を思い出させ
焼け付くような痛みを思い出す。その胸の苦みを私は無理矢理嚥下した。
「………しょうがない、よね?」
「……あぁ………仕方ない」
ぱしゃり。
エアリスは大きく水を蹴り上げて、立ち上がった。
「………いこっか?」
「………」
水の飛沫は今一度強く光を弾き、私の視界を焼いた。
私はその様をゆっくりと眺めて、立ち上がった――……。
end
2008.8.4.up
img 戦場に猫様
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