<忘れさせて>


恋したくなるお題
様より。
片恋のお題(1〜20)、13.

TOS Collet→Lloyd







泣きたくなる位に綺麗な、空。

きっと、もうすぐこんな空を見ることも出来なくなるんだ。


<忘れさせて>





―――その前に、見ても何も感じなくなるのかも。

どっちが幸せなのかな……。

声とか、痛みとか、一つ一つ失って今、わたしを世界と繋いでいるのは、神子としての使命なんかじゃなくてロイドへの
気持ちなのかもしれない。

誰にも言えない。

言うことも出来ない。

それに理解してもらおうなんて、思ってない。

隣で夕日を見ているロイド。
難しい顔して、夕日なんて殆ど見てないのかも。

『絶対、元に戻してやる』

ありがとう。
ありがとう。

わたし、知ってるの。

神子の運命。

リフィル先生も、知ってる。

無駄なの。

それしかないの。世界が救われるためには、それしかないんだよ。

ただ、ロイドがわたしのことを考えてくれるのが嬉しくて、嬉しくて――――それだけで旅を続けているの。

最低だよね?



誰にも許してもらえない―――許してもらおうなんて思わない。



願うのは一つだけ。

あなたへの気持ちだけは最後まで失いませんように。

あなただけを守れるように。

空が堕ちても構わない。あなたを守れるなら、何を失っても怖くないの。

ロイドの掌を手に取った。

‘すき’―――なんて、書けるわけもなくて、ゆっくりとロイドの掌に指で字を書いた。

‘きれいなゆうひだね’

「そうだな……」

‘守らないといけないね’

「……あぁ」

ロイドの瞳が微かに潤んで、そのことにわたしは戦慄にも似た、喜びを感じる。

空は、血にも似た赤。

もうすぐ堕ちていくに違いないと、わたしは思った。



end

2008.8.4.up



img 空と海の鐘