<そんな風に笑うんだね>


恋したくなるお題
様より。
片恋のお題(1〜20)、19.

FF7 Cloud→Tifa








明るい笑い声に俺は振り返った。

パーティーの1番後方で、エアリスとユフィと――――ティファが笑っていた。

ティファが笑っている。

楽しそうに。

俺は―――………。



<そんな風に笑うんだね>






俺とティファの関係は大分前からぎくしゃくとしている気がする。

ティファはカームで過去の話しをしてから何か――。

俺をちらちら見ているのは知っている。思い詰めたような顔で―――それは、まるで……。

怖いものに出会った時のような……?

まさか。

何故?

「……ティファ」

びく、と身体が震えていたのを俺は見逃さない。

「……なに?」

――――俺が怖い……?

そんな質問。訊いてどうするというんだ?そう思って俺は踏み留まる。

「……なんでもない…」

「そ……そう。あの……あのクラウド……」

今度はティファが俺に何かを訊こうとした。

「何…?」



「……あのね………あのね……今日のご飯何がいい?」

「……なんでも」

訊きたいのは本当はそんな事じゃないんだろう……?

いらついた。

ティファは泣きそうな顔で黙り込んでしまう。

「……」

ティファはどんな笑顔だっただろうか?

昔、星空で約束した時、どんな笑顔を浮かべていた………?

思い出せない。

恐ろしい程に思い出せない……。

ついさっき笑っていたのに。

その笑顔さえ思い出せない。

ティファが俺に向ける目は。


「じ……じゃあ適当に買い物してくるね……」

「一人で大丈夫か?」

「うん。エアリスとレッドが付き合ってくれるって……」

「……そうか…」

「じゃあ、行くね?」

「……ティファ」

呼び掛けてティファは振り返る。ティファの顔は不安げだった。

その手を思わず掴んだ。

「……クラウド……?!」

「ティファ。笑って?」

お願いだから――――。

ティファの笑顔が思い出せない。


記憶も靄がかかったようで―――――あの日の炎と、あの日の星空以外は全て幻なんじゃないか――
―そう、思えて――。

でも確かに君は笑ってくれた。あの星空の下、俺だけを見て笑ってくれた筈なんだ。

「クラウド……?」

「……ごめん……」

「ううん……」

ティファは泣きそうな笑顔を浮かべた。

「………」

―――なぁ。

心の中で問い掛ける。

―――ティファ?そんな顔で笑っていたか?

違う―――気がする。

そうだった―――気もする。

俺は立ち去るティファを見て立ち尽くすだけだった。



end


2008.8.4up
.
img Sky Ruins