<消えない温もり>
恋したくなるお題 様より。
片恋のお題(1〜20)、9.
FF6 Lock→Rachel
今も手を伸ばせば―――。
「…………」
触れた口唇はやっぱり冷たかった。
お前の罪は許されないんだよ――――そう、言われたような気がして、目を閉じる。
口唇だけじゃなく、頬に、絹糸のような髪に、触れてみた。
冷たい―――あまりにも冷たい。
あの温もりが嘘みたいに。
『……ロック…』
何度も何度も、温もりを確かめあった。レイチェルの温もりを忘れることなんて出来ない。
ふわり、とした笑顔。
少し不機嫌な顔。
泣かせてしまった顔。
すべてが温かった。
すべてが温もりだった。
彼女がいたから生きてこれた。それはきっと、今でも――――……。
彼女の温もりが俺の心の中から消えること永遠に、ない。
レイチェルを見た。
レイチェルは温度がないなんて嘘のように美しかった。
今にも動き出しそうなくらい。
組んだままの手に手を重ねた。
手はやっぱり冷たくて俺はふいに泣きたくなる。
「………必ず……」
続きは言葉にならなかった―――心の中で呟く。
―――必ず、フェニックスを手に入れて戻ってくるから。
君の温もりを取り戻してみせるから―――………。
そっと、もう一度キスをする。
冷たい口唇が悲しかった。
end
2008.8.4up
img Four seasons様
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