<彼のとなり>


恋したくなるお題
様より。
片恋のお題(1〜20)、7.

TOS Shihna→Zelos







かっこいいな。

横から見た時に見える鼻梁のラインが凄く綺麗。

燃える炎みたいな紅い髪も綺麗。

宝石みたいな蒼い目も、凄く、綺麗だ。


<彼のとなり>

片恋のお題 7
TOS Shihna→Zelos





それはきっとあたしがこいつに惚れてるから、とかじゃなくてただこいつの横顔を見てるとそう思
うだけ。

他の人も間違いなくそう思ってる。

それはあたしにとってこそばゆいような――――やきつくような――――そんな気持ちになってしま
う。

隣にいなかったらそんな気持ちにならないのかな……。

こうしていても、すぐに。

「神子さま!」

「神子さま!!」

綺麗に着飾ったお嬢さんたちが、まるで条件反射みたいに寄ってくる。ゼロスに直接は言いはしないが、
敵意の篭った目であたしをちらっと見て、あたしなんかが、此処にいる、なんてことはまるで無視をして。

「こんなところで、どうなさったんですの?」

「私たちのサロンでティーパーティが今からありますの。よろしければ、いらっしゃいませんこと?」

「………」

ゼロスはにっこりとそれそれは綺麗な笑顔を浮かべて、言う。

「ごめんね?ハニーたち。俺さま、今デートだから。また今度」

少女たちはきゃあきゃあ言いながら、笑顔を作った。

「えぇ。また今度是非」



「………………」

こうゆうことは正直、1度や2度じゃない。殊にメルトキオを歩いているとき、貴族の女の子たちはあたし
なんかに全く躊躇しないで、ゼロスに声をかける。

ゼロスは最近ずいぶんきっぱりと断るけど………、あたしは思う。

あたしに気を遣ってるのかな……?

本当は、あたしの隣なんかよりずっとずっと相応しい場所がこいつにはあるような気がする。
 そう思うと、なんだかあたしはやる瀬なくって、どうしようもなくて、よく分からない感情に支配される。

「………」

「………………」

「………」

「………………っあー!!」

突如眉間に皺を寄せてゼロスは、髪を掻きむしった。

「なんなんだよっ!?」

「な……何がさ??」

「ちらっちらっちらっちらっ!!気が散るだろー!!」

「ちらちらって……あ……あたしがあんたをそんなに見るわけないだろー!!」

「見てたじゃねーかっ!!」

「いくら俺さまがスーパービュリホーとは言えそんなに気になるなら堂々としろっ!!」

「気になるかっ!!!大体堂々って何さ!!堂々って!!」

「こうだよ!こうっ!!」

がっ!!と肩を掴んで、ゼロスはあたしを引き寄せた。



目の前にゼロスの顔――――あまりに近くて、息が出来ない。

そこであたしは思い知る。

逃げることなんて、出来ない。あたしは完全にこいつに溺れている。誰が、こいつの隣にいたい、とかじゃなくって、
あたしがこいつの隣にいたい、そう思っていることに。

どうしよう。胸が苦しくて、苦しくて――――やっぱり。

息が出来ない。

―――じゃなかった、息が出来ないのは当たり前。こいつの口唇があたしの口唇を塞いでいたから。

「なんなんだいっ!!あんたはっ!!」

「いでぇ……なんだよ!!ぶつことねーだろー!!お前だってこうしたかったんだろー!!」

「ふざけんじゃないっ!!」

あたしはゼロスを思い切り殴った。そのまますたすた歩き出して、振り向く。

ゼロスはまだ転がっている。

ざまぁみろ。

って思ったけど、あたしはまたゼロスの隣に戻った。惚れた弱み、なのかもしれない。

にやり、とゼロスは笑った。

「しいなはぜってー戻ってくると思った〜v」

「………」

「やっぱ俺さまの隣、サイコーだろ〜?」

「……バーカ」

言ってあたしはゼロスに手を伸ばす。あたしたちは、また、何もなかったように歩き出した。



end





end

2008.8.4.up


img あんずいろ