<いつかまた>


恋したくなるお題
様より。
片恋のお題(1〜20)、10.

FF7 Aerith→Zack







今ほどわたしは、わたしがセトラだと言うことを悔やんだ瞬間はないかもしれない。

あなたは戻って来た。

わたしはそれをじっと見ている。

「………ザックス……」

信じたくない。
信じたくない。

でも―――………。

あなたは困ったように、笑ってあたしに手を伸ばす。

あなたの手がわたしに届かないことをわたしは知っていたから、わたしは泣いた。


あなたは逝ってしまった。

わたしはそれを確実に知る。

セトラだから――………。


セトラは星の民。
人々が生まれ、生き、旅立って行くのを見つめ護る役目。

お母さんもそうだった。

わたしは幼い時からそれを知っていたから、ママが旅立つことも、お母さんの大切な人が旅立つ時も
静かに眺めていた。

だけど――――こんなにも、心が揺れる。

いけない。

いけない――――こんなに心が揺れたら、セトラの役割を果たせない。

だけどやっぱり涙が溢れた。

ザックスは笑う――――わたしの大好きな笑顔。

エメラルドグリーンのうねりが、大きく波打って彼を迎えにくる。

―――本当の、お別れ。

止まらない涙を拭いて、わたしは笑った。

最後はあなたに負けない位の笑顔を――――。

声にならない声で、あなたは言った。

.................』

わたしは頷いて、笑う。

「わたしも、だよ」

あなたを愛してる――――いつか、いつかもう一度会える時まで。

エメラルドグリーンの波はいつもたゆたって、人々の命の輪を廻す。

あなたはいつか、生まれてくる。

わたしはいつか、あなたと同じ波に戻る日が来るのだろう。

絶対にわたしたちはまた巡り逢える。


きっとわたしはあなたを探すだろう。

だから、さよならじゃなくて。

いつかまた―――………。




end

2008.8.4.up


img 空と海の鐘