<squall>


※パラレルです。ED後、クラウドがエアリスとエッジで一緒に住んでる設定です。







<SQUALL>





ゴロゴロと、低い音が響いた。空を見上げるとさっきまであんなに晴れてたのに、灰色をした雲が空を覆う。

エアリスは思い切り美しい眉をひそめた。


「やだ〜。夕立?」


立ち上がり、その細い腕で植木を室内にいれた。そしてまるで子供のように、窓に張り付く。


生まれこそアイシクルロッジだが、育ちはずっとミッドガルだったエアリスは気象変化を見たことが少ない。
天を人工の壁で覆ってしまっていたミッドガルは、空など見えなかったから。クラウドたちとの旅の間はずっ
と、空が見えていたが空をマジマジと見る、と言った機会はなかった。


空の色は日々、変化して見始めればキリがなかった。大好きな植物とも深い関係を持つことにもすぐに気
付いた。太陽は植物が生きて行く上で欠かせないものだが、照り過ぎては植物を逆に枯れさせてしまう。
雨もまた、なければ植物は生きていけないが、降り過ぎては植物は根腐れを起こしてしまう。




―――バランスが、大事なのよね……。私、ばっかり好き好きっていうのは、バランス、悪いわ。



ぱらぱらと、雨が降り始めた。途端にざぁっ…と強い雨に変わる。



子供のように、胸が鳴った。強い雨は激しく地面を叩く。


雨は晴れの日よりは好きではなかったが、嫌いではない。なにより晴れた時には、虹が見えたりするし雨
上がりに輝く植物を見たりするのも大好きだ。




―――それに…。




旅の途中で、雨に降られて仲間とはぐれ、クラウドと二人きりになった時、草影で雨宿りをした。



――あの時。




夢中でキスをした。どちらから、なんて覚えてはいない。本当に激しいキスだった。



―――あれ以来、結構、雨好きなの。



クラウドは仕事で3日程、遠出している。雨を見て、クラウドとのキスを思い出してエアリスは悲しげに長
い睫毛を伏せた。


―――クラウド、早く、会いたい。


今朝、『今日、帰る。土産、楽しみにしててくれ』と言うメールが来たけれど、こんな天気になってしまった
し心配だ。


空に閃光が走った。


少しおいて轟音が響く。怖くなんてない筈なのに、肩が震えてしまった。

雨脚は更に強くなっている。

俄かに不安を感じた。


―――クラウド、だいじょぶかな?



何処にいるかは、分からないが近くだったら落雷の危険があるし、これだけの雨だ。いくらクラウドでもバ
イクで事故を起こす可能性だってある。



先程より更に大きな轟音が響いた。


「きゃあ!!」


エアリスは思わず悲鳴を上げた。悲鳴と同時に辺りが暗くなる。停電だ。


「やだもぉ〜!!」


涙ぐみながらも、エアリスは空を見上げた。雨はやむことなく降り続いている。思えばどんな雷のときも、
大雨の時も、雪が降っているときもいつもクラウドが傍にいてくれた。


「クラウド…」


涙が零れた。


零れる涙を拭おうとした刹那、聞き慣れたエンジン音がエアリスの耳に響いた。考えるより先に身体は
走り出していた。



玄関が開くとすぐにクラウドに飛び付く。

どちらからとも知れずキスする。


「…はぁ……」


口唇を離した時には、エアリスは息切れしていた。


「…なんか、思い出すな」

それまで抱きしめていたエアリスの身体を少し緩め、クラウドが囁いた。


クラウドに支えられたまま、エアリスは笑った。


「…あの時の、こと??」

「そ。あの後、エアリス、風邪ひいちゃったんだよな?」

「そうそう。でも…ね、クラウドとキスできて…クラウドが、熱出してる間、ずっと看病してくれて、すごく嬉
しかったんだ」



エアリスの素直な言葉にクラウドは微笑んだ。




更にキスを重ねようとして、床を濡らす雫にようやく気がついた。

「びしょびしょ、だね」

「悪い……風邪、ひいちゃうな…」

ううん…とエアリスは首を振った。

「一緒にお風呂、入ればだいじょぶ……」

クラウドの首に腕を絡めエアリスは囁いた。

クラウドは少し顔を赤らめたが嬉しそうに、微笑む。


「……そうだな……」

そしてまたキスを重ねようとした刹那、またも雷鳴が轟いた。

「きゃっ!!」

エアリスは悲鳴を上げてクラウドに抱き着いた。

「エアリス…?」

エアリスの身体は小刻みに震えていた。一瞬、自分が持ち込んだ雨で身体が冷えたのかと思ったがそ
ういうわけではないらしい。

「……もしかして、エアリス、雷苦手なのか?」

「そ…んなわけ…ない……」

強がって言うエアリスの視界に閃光が走り、エアリスはクラウドの胸に顔を埋めた。

「…やっぱりそうなんだ?」

意地悪く笑うクラウドにエアリスは頬を膨らませた。

「もう〜!」



「……エアリス……」


真剣な目で見つめるクラウドを窓から漏れる雷の光が照らし出した。その美しさに目を奪われた………そし
て、口唇も。


轟音が響いたけれど、もう気にはならなかった。ただ貪るように互いの口唇を重ねた。



「……こうしてたら、怖くなんてないだろ……?」




エアリスは頷きクラウドの胸に頬を寄せた。

「……お風呂、あとにしよっか……?」

「風邪ひいても責任とれないぞ?」

「また看病して、ね?」

二人でくすくす笑い合った。




夕立の後は爽やかに、晴れるだろう。



end.