<流れ星>
空が高い――――――――――。
<流れ星>
ごろりと横になった草原から見る青空。
それは、滅亡への危機など嘘かのように澄み渡っている。
だが、彼の気持ちは晴れない。
―――ちっ。
クラウドは舌打ちした。タイニーブロンコが故障して、修理のためにロケット村に戻って3日が経っていた。
日が経てば経つ程にセフィロスが遠くなってしまう――――早くしなければ。
早く―――――どうしようもない焦燥感にかられる。
クラウドは起き上がった。
自宅の庭にタイニーブロンコを置き、修理にせいを出すシドに声をかけた。
「……どうだ?」
シドは煙草をふかしながら答えた。
「……あー。パーツがな完全にいかれちまっててよ。それを今交換してぇんだが…ちっと時間がかかるか
もしれねぇな」
「………」
早く、セフィロスに会わなくてはならないのに―――――。
だが、目的地である古代種の神殿はタイニーブロンコがなければ移動は難しい。
――――待つことしか、出来ないのか。
「クラウドー!」
エアリスの声に顔を上げた。
「チョコボ貸してくれるらしいから、一緒に遊びに行こ?」
――――この焦燥感の中、とてもそんな気分になれなかった。だから首を横に振る。
「え〜。つまんない〜」
エアリスが頬を膨らます。
「…悪いが。エアリスも危ないから一人では遊びに行くな」
エアリスに言い残し、クラウドは歩き出した。
再び、草原へと横になり目を閉じた。
燃える炎。
冷たくなった母の骸。
決して親しくはなかったが顔を知った人々の骸。
――――セフィロス。
なぜ?どうして?
混乱の中、思う。
―――ティファは……?
幼い頃から想いを寄せていた、隣家の少女。
ティファは家は燃え盛り、入ることなど出来る状態ではなかった。
――――セフィロス…!
俺は。
――――オマエヲユルサナイ………!
魔晄炉へと、走った。
そこで目にした、炎と無惨にもセフィロスに斬り捨てられる幼なじみの姿―――――
「ティファ!!」
「……うわぁ!?」
目を開けると、そこは燃える魔晄炉などではなく、ロケット村の草原だった。
「もう!クラウド!びっくりするなぁ!!」
レッドが炎の宿る尾をぱたぱたと振った。
「………俺は……」
寝起きのクラウドは、呆然と空を見上げた。
既に陽は沈み、空には星が瞬き始めていた。
「迎えに来たんだ!夕ご飯だよ!オイラ、お腹空いちゃったよ!!早く行こう!」
「……あぁ」
頭をポリポリ掻きながらクラウドは立ち上がった。
「……エアリスとユフィとヴィンセントはね、チョコボで遊びに行って夕ご飯は済ましてくるって。バレットも
行きたい所がある、とか言ってどっか行っちゃったよ。ケットシーは姿が見えないし…」
おおよそ、バレットはコレルに行ったのだろう。ケットシーは、神羅への定期報告と言ったところか。エア
リスとユフィは多少心配だがヴィンセントがついているなら問題はないだろう。
「……じゃあ、今村にいるのは俺とシドとティファとお前位か…」
「そーだね」
先程の夢の、ティファの姿が思い出された。
―――セフィロスとは異なる種類の焦燥感を感じる。
無事な姿を確認したかった。ティファの温かな笑顔をどうしようもなく見たくなった。
シドの家の食卓に、ティファはいなかった。
「……ティファは?」
「食欲ないみたいで……食事の用意をしたら出て行ってしまいました」
シエラの答えに、軽く頭を下げシドの家を出た。
ロケット村の中でティファの姿を探した。
ロケット村の象徴たる傾いたロケットの所にティファはいた。
ロケットを見るわけでもなく、ロケットを支える柱に張った足場に腰をかけ夜空を眺めている。
ティファの姿を確認しただけで先程までの焦燥感がほんの少し、和らいだ気がした。
「……ティファ」
声をかけると、ティファは振り向いた。
「……クラウド……」
弱々しい微笑みに、何故か胸が締め付けられた……。
ティファの横に腰かけ、顔を覗いた。
「……体調悪いのか…?食欲ないって」
「……ううん。なんでもないの…」
「……ならいいんだが……」
「……クラウド。……あの……よかったら…一緒に、星見ない??」
「……あぁ」
――どうしてだろう。ティファが不安げなのは……。
クラウドは夜空を見上げた。晴れていた今日は夜空にも満天の星が輝いている。
「……やっぱりミッドガルと違って、星がたくさん見えるね」
「……あぁ。あの日と同じ位、星がたくさん見える」
『あの日』――――クラウドがニブルヘイムを去る前日、クラウドはティファを呼び出した。
あの拙い約束は―――どこかくすぐったいような、切ないような気持ちを思い起こさせた。
更に今日の夜空は、あの日のことを不思議な位思い出させる。
―――ティファは、視線を夜空からクラウドへと戻す。
「――あ。流れ星……」
ティファの声に夜空を見ると、星が確かに夜空に弧を描いていた。
ティファは手を前に組み、目を閉じた。
星は音もなく消えて行く。
「……何を願ったんだ?」
ティファは目を開けて、クラウドを見た。
「………クラウドと……ずっと……」
「……ずっと……?」
「やっぱり内緒!願い事って口にしちゃうとかなわないのよ!……クラウド。そろそろ行こう?」
立ち上がったティファに促され、クラウドは立ち上がった。
―――ティファの願いは何だったんだろう…?
クラウド自身の願いは―――もう二度と、セフィロスにティファが傷付けられることがないよう……。
そして、いつか―――――。
星がまた、流れた。
end
2006.10.2up
内谷 秋様キリリク Specail thanks!!
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