<imitation>
「………もう秋だな」
クラウドの言葉にエアリスは顔を上げた。
「………え……?」
「……いや。空の高さがもう秋だな……って思っただけだ」
「……そう…」
眩暈がした。なるべく平静を装いながら、クラウドを見た。胸は早鐘を打っていたけれど。
まだ濡れた金色の髪から雫が零れている。
――――全然……違う人……。
肌は白い。髪は綺麗な金髪で、女の子みたいに綺麗な顔をしている。
―――あの人はもっと背が高かったし…声も明るかったわ。
それなのに……。
―――どうして、比べちゃうの…かしら…?
クラウドの些細な言葉、仕種―――どうしてもザックスを思い出させる。
だから、内心で比較してしまう自分。
―――……最低。全然、違うって解ってるのに……。
『もう秋だな〜』
『……秋だと、何か、あるの?』
『秋だと、仕事が遠方なんだ。すっげぇ田舎らしい……けど、ソルジャーとしての初遠征だからな〜』
『…そっか…』
「―――エアリス?」
「…なぁに…?」
クラウドの言葉にエアリスは振り向いた。
「……何か飲むか?」
―――ずきん……と胸が痛んだ。
彼も、必ずあの後には飲み物をエアリスに手渡してくれたから。
「………」
エアリスはこくり、と頷いた。
クラウドは冷蔵庫からミネラルウォーターを出し、エアリスに手渡す。自らもミネラルウォーターを口に含む。
――――あの人は……。
いつも一気飲みだったわ。
その後、ぷはぁと息を上げ笑う顔がまるで少年のようで好きだった。
「……あ…」
また、比べている自分に気付く。
――――最低…。ザックス……。あなたが、いけないのよ?
もうこの世にいないだろう、かつての恋人に心の中で声をかける。
―――あなたが、わたしを置いて逝ってしまったから………。
―――わたし、まだ、こんなにも……あなたを……想ってる………。
―――――だから、クラウドの中にあなたの、影を、探してしまう。
「……エアリス……?」
心配そうに覗き込んで来るクラウドの瞳の色はザックスと同じ色で――――少し泣きたくなった。
「……エアリス……?……無理……させた…?」
不安げに聞いてくるクラウドに首を振る。
「……違うの……」
――わたしが、弱くて卑怯なだけ、なの。
「……ごめんね?」
――いつか。あの人を忘れて、あなただけを、見るから、それまで、待ってて………。
end
2006.10.9up
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