<堕天>






飢エテイル。

どうしようもないほどに。

飢エテイル。

この暗い、底のない飢えにはおそらく………

果テハナイ。





<堕天>





ティファが眉間の皺を深くした。口唇を強く噛むものだから、口唇から血が滲んだ。おそらく本人は気付いて
いない。

恐ろしい位に俺の意識はクリアで、まるで科学者が研究対象を観察するように冷たい目で、彼女を眺める。
燈、一つない暗闇の中、彼女の姿を明確に捉らえることが出来るのは、俺自身がそのどこかとち狂った科
学者の研究の結果だったからに他ならない。

思わず冷笑が浮かぶ。



こんなにも。

呪ワシイ躯。

もう誰にも。

コノ呪イ ハ解ケナイ 。


凄まじい程の焦躁感に駆られ、ティファの首筋に噛み付いた。

「……っ!…」

苦悶に耐えるティファの顔はとても、美しい。

酷い男、だよな。幼馴染だって言うのに。

君のことを愛してもないのに責め苛む俺……。

でも、おそらく君は、俺が好きだからって理由だけじゃなく俺を受け入れている。

もちろん、君の気持ちには気付いてる。ティファは何も言わないけど、とても解りやすいから。

だけど、結局は……

君モ飢エテイルンダロウ…?

それとも…君を苛んでいるのは……

罪悪感、カ?

どちらでも別に構わないけど。

俺ヲ置イテ逝クノハ許サナイ。

俺の手は、躯は、こころはこんなにも血で汚れてしまったからもう……。

エアリスニハ逢エナイ。

絶望。

それは暗く深い闇の中。あの時のように救い上げてくれる手はない。






ダカラ―――。

ナァ、ティファ?

フタリデ堕チテ逝コウ。




end