―――ここを訪れるのは幾度目なのだろう?
きっと仲間たちも、来ている。けれどあの二人のことはまるで話してはいけないような雰囲気で、たまに集まる機会があっても
話すことはなかった。
――――ねぇ?もう12年も経ったのよ?
ロイドとコレットは3人の子供に恵まれイセリアで仲良く暮らしている。
―――ジーニアスとプレセアも結婚したの。
―――ミズホの里も大丈夫。
おろちが新頭領となったミズホは前頭領があのような騒ぎを起こしたにも関わらず重用され、今に至っている。
――――セレスも、しっかりした人と結婚したらしいわ。あなたの子供も元気。
……安心して。
風になびく自らの銀の髪も、あの時よりは長くなっている。
ぽん…と誰かがリフィルの肩を叩いた。
振り向けば黒い髪の少年が立っている。
―――年の頃は11、2と言ったところか。
少し吊り上がり気味の目に既視感を覚えた。
少年はリフィルと目が合うと人懐こい笑顔を浮かべた。
「……あなたは……?」
「……リフィル様……だよね??」
突然、少年に名前を呼ばれ戸惑う。
「……確かに私はリフィルだけれど……あなたは…?」
―――会ったことはない。
それは間違いないのに、この少年は何故か懐かしさを感じる。
「……名前は内緒にしろ…って言われたんだ」
―――誰かに似てるんだわ。目付きとか…。
「じゃあ、言うよ?」
「え?!」
「……いつも来てくれて、ありがとう。相変わらずクールビューティだね。……俺たちは大丈夫だから、心配しないで。いつか何処かで
会おうぜ―――以上です」
「――!?」
リフィルが何かを言おうとした刹那、煙が上がった。
少年の姿は煙と共に消える。
―――ミズホの煙玉?!
そして、ようやく合点が行く。
少年の猫のような吊り目―――猫顔だった彼女。
『リフィル様』『クールビューティ』――――そんなことを言うのはテセアラとシルヴァラントが統合されて15年経っても彼だけだ。
なによりも、あの少年の瞳は優しいブルーグレイをしていたではないか。
「……本当に、人をかつぐのが大好きなのね。あなたたちは……」
リフィルは呟き、教会の跡地に花を捧げた。
end
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